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物置の中にあったものを見て、逃げるように帰ってきた私を、両親は驚いたように迎え入れた。脈絡のない私の言葉を、しかし母も父もちゃんと聞き留めてくれたようで、翌日には父が警察に立ち会うためと実家に戻っていった。
姉は、死んでいた。
物置の中で、首を吊って。
大学に上がって以降、姉が何をするにしても両親は自由にさせていた。つい先日成人したこともあるだろう。
だがさすがに無断外泊が一週間も続けば心配もするというものだ。
「何か思い当たることはないか?」
そう聞かれて、姉が「実家見に行ってくる」と言っていたのを思い出した。けれど、姉が両親に言っていないということは、秘密にしたいということでもある。姉の秘密をばらしたら、あとあと何をされるかわかったものではない。
だからその場では「さあ?」と答え、続いて「友だちの家に泊まりに行きたいんだけど」と相談をしたのだ。
そうだ、私は、姉を探しに行ったはずなのだ。
なのに、どうしてか、実家の敷居をまたいだ瞬間、まるで家に帰って来たかのような感覚に陥っていた。それを思い出すたび、寒気がする。
姉の死については、周囲の状況から自殺と判断された。死んだのは私が訪ねる数日前で、物置の中は暗くてよく見えなかったが、実際はかなり腐敗が進んでいたようだ。姉が座っていると思っていた縁側には、姉のスーツケースが転がっていたらしい。
死後、姉の自室からローズティーが出て来たのに、母は静かに泣き崩れた。姉がローズティーを好んでいたのは知っていた。けれど、それがどうして、泣き崩れるほどのものなのだろう。
そもそもどうして、姉は自殺などしたのだろう。それも、実家の、あの、薄暗い物置の中で。
何故、と両親に聞いた声は、自分でも驚くほど震えていた。それに、両親は隠すのをやめたのだろう。
「✕✕は、父さん――お前たちの祖父から、」
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