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おとなしく、みんなが観察終えるのを待っていれば良かったと、たぶん、そう思ったはずなのだ。
真っ暗で、何も見えない物置の中。体を撫でる無骨な手の感触を、他人事のように感じていた。
どうして物置に近づこうと思ったのだろう。
危ないから近づくなと、あれほど祖父に言われていたのに。
ああ、でも。
この人も祖父と同じ顔をしている。
母屋に戻って祖父と対面して怯えた私に、酔っ払った父が「どうした?」と言ってきた。
「さっき、物置に近づいたことで怒られて……」
それは咄嗟についた嘘だった。
ちりんちりんと、咎めるように風鈴が鳴いた。
薔薇の香る季節は、祖父は何もしてこない。理由はわからない。ただ、薔薇の咲く季節は何もしてこなかった。薔薇の世話をしているときは、私の知っている祖父のままだった。
そして、風鈴の鳴る季節になると、祖父は人が変わる。物置が、待ち合わせ場所。スコップや鉢、肥料の積まれた暗い物置の中で、あの鬼は子どもを食べた。
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