002

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病的な程の白い肌を晒し、横たわる黒い髪の少女。ただの玩具である少女に名前は無い。 今度は何をされるのだろうか…と。例えば酷い暴力だったとしても防ぐ手立ては何も無く、ぼんやりと思うだけ。恐らく平等に行われて居るであろう所謂飴と鞭だが、未だ幼さの残る少女に取ってみれば恐ろしい事の方が強く残る様で。此処に連れて来られてから暫く経つが、死ぬ思いをさせられる方が圧倒的に多い気がして居た。現に、この状況。少女が横たわって居るのはテーブルの上。取り囲む人々が誰かは知らない。どれかが主人なのかも知れないが、主人の顔は解らない。酷い事をする人の事は何時だって忘れたいのだから。 首に絡み付く様に付いた傷以外は、それらしい痕跡は見当たらない。それは少女に対する目的が表面的なもの以外である事を示して居る。光を失った眼に映るのは虚無。か細い呼吸を繰り返しながら意味の無い言葉を呟いて、それが誰かに届く事も無く消えて行く。誰かが触れる度に拒絶し払い除けたくなるが、それは許されない。冷たい何かが触れた時、少女は眼を閉じて、全ての感覚を放棄する。生きる意思すら無いかの様に、呼吸以外の一切の動作を無くした。 しぬのだな、と呟いたかどうか、自分でも良く解らなかった。
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