007

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自身が裏切り者だった場合“裏切られた側”の事は考えない。何故なら彼等の為に生きて居る訳では無いし、自身に対する決定権は他ならぬ自分自身だからだ。裏切りに値するものが彼等にはあり、ジルの中の闇がそれに答えた。彼方を選んだ事を後悔した訳では無いが、正しかったとも思えない。要するに、何も無かったのだ。 あの時拒絶したシンの手は冷たくて、今もひんやりとして居たが何だか心地好かった。 「よぉ、スコーピオン」 「……何?」 シキがゆったりと近付いて来た。シキは元々は某統率組織に居たらしいが、そんな優等生が何故こんな対極と言える所に居るのだろう。と言うか、スコーピオンとは何だ。 「お前、シンとどう言う関係?」 「一度勧誘された事があるだけだ」 「それにしちゃ随分ホットみたいだけど」 「それ以上は何も無い」 ふーん?と、未だ何か言いた気にシキはニヤリとした。長めの前髪の間から嫌らしく細めた眼が覗く。良からぬ事を企んで居そうな顔だ。そう言えば、リーにも似た様な事を聞かれた気がする。シンは色んなものを欲しがるから深読みし甲斐があるのかも知れない。そうは言っても選り好みの激しそうなシンとジルの間には、残念ながら今の所何も無いのだけれど。痛くも無い腹を探られる様で、ジルは少し居心地の悪さを感じた。 「そうそう……あのガラクタ、勝手に出て行ったってさ」 「……恩知らずだね」
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