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誰にも言った事は無いが、リーはシンの翼が好きだった。元々は真っ白でふわふわして居て、それこそ天使を思わせる翼だったらしい。今はと言えば漆黒の鋭い刃物が並んで居て、正に異形の翼である。どう言った経緯があって堕ちたのかは良く知らないが、その辺りには当の本人は然して興味が無さそうだった。シンが話したがらない事を聞きだそうとは思わないけれど、新入りの事は気になる。彼奴は此処では無くシンの元へ来たのだから。
「特に深い意味は……何と無く欲しかっただけ」
「何と無くって何だよ……」
二人は所属が同じだった事もあると聞くし、それなりの仲だったとしても不思議は無い。ジルとやらはどうか知らないが、シンはそう言う奴だ。
「いや、本当。向こうは俺の事嫌いだったと思うし。自分から来るとはね、驚いた」
それ以外何も無いのは本当、と付け加えて、ふいと視線を逸らした。リーもそちらをちらりと見るとその先にはケイが居て、首を突っ込みたそうに此方を見てニヤニヤして居る。面倒な奴に聞かれた、とリーは思った。
「……盗み聞きかよ」
「人聞き悪ィね、聞こえただけ」
リーが少し嫌そうに指摘する。ケイは悪びれもせず、寄り掛かって居た壁から背を浮かせた。
「んで?ジルとか言うあの新人、お前が手付けた男なの?」
「俺を何だと思ってる」
「随分と可愛い様だからさ。別に良いよ?昔の男でも進行形でも」
お前はそう言う奴だろ?と、見透かす様な嫌な笑いで二人を見た。
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