6人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
ーーこうなったら、エチュードとかあまり得意じゃないけど、台本にない動き、わたしもやってやる。
「いいよ。先生がそのつもりなら、わたしにだって考えはあるからね」
「黒川……」
一瞬の隙をついて彼をソファに押し倒す。
抵抗するつもりはないようで、彼は上目遣いでこちらを見つめてくる。
「なんでも受け入れてくれるって言ったもんね。いいんだよね」
「……どうぞ?」
心なしか、彼の体が震えた気がする。
これが、いわゆる武者震いというものなのだろうか。
許可を得たので彼の首元に手を伸ばしてネクタイを解く。そしてそのネクタイを使って両手首を縛った。
「それじゃ、しばらくそうやって反省しててね、センセ」
「……は? え、ちょっと待って」
「いけないのはそっちだよ? 恨むならずるい手を使った自分を恨んでもらえます?」
わたしは、そのままリビングから離れ、ソファに彼を放置した。
かずくんは、しばらく結んだネクタイを自力で解こうと必死になって、ソファに寝転がったままガタガタと物音を出していたが、途中から静かになり、解けそうにもなく観念したのか声を出す。
「おひいさーん。おれが悪かったよー。でもおひいさんとだけしかキスしたくないのは本当なんだよー、それだけはわかってよー」
ーーあれは、絶対に反省していないやつの言い方だよね。
わたし自身、着替えたりやり残していた家事をしたりと作業していたのでかれこれ2時間くらいは経ってしまったと思う。
「苺和が帰ってこない上におれもオフでずっと家にいるなんてめったにないからチャンスだと思ったんだよー白状するよー」
ーー嘘。よほどのことがない限り、絶対家に帰ってきて、苺和が寝たと思ったらわたしにひっついてくるのはどこのどなた?
最初のコメントを投稿しよう!