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「……嘘つき」
かずくんのいるソファの前に行くと、わたしが縛ったときより緩くなっていて完全に自由がきく状態になっている。わたしは仕方なくそれを解いてあげた。
「だって、おひいさんが構ってくれないのが悪い」
拘束から解放されたかずくんは、ワイシャツのボタンを外しながら、不機嫌そうに言う。
ーーいや、なんでわたしが悪いことになってるの。
「別にいじわるしたいわけじゃないよ。変なことさせようとするからイヤだっただけ」
「たまにはいいじゃん。それこそ、苺和がいないときをって配慮してあげたんだし」
「そういう問題じゃ……」
「じゃあ、2択ね。おれとイチャつくことに、賛成? 反対?」
「……」
ーーそんなの、答えはひとつに決まってる。
「……賛成」
ぼそっと呟いたわたしの言葉にふふっと軽く笑った彼がまた口づけを落とす。
「今回の件でよくわかったよ。もうおれはおひいさんを目の前にしたら、演技するどころじゃなくなるって」
「……御門虫介、だもんね」
映像でのデビューを機に、かずくんは本名から名前を改めた。
わたしの旧姓である御門に、熱中している状態を意味する虫を組み合わせたそれ。
例え演技でも、わたしが好意を寄せているのに知らないふりはできないなんて、滑稽すぎる。
「これに懲りたら、わたしは応援だけさせてもらうね」
「それはつまり、こういうことで応援してくれるってことでいいの?」
「……検討させて」
「すぐ無理って言わないところ、かわいいね、おひいさん」
「じゃあ、発言撤回する」
「却下します」
その後、時間の許す限り、わたしが彼に愛されたのは、言うまでもない。
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