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「俺、帰る」
「待てよ、一緒に帰ろって…」
「1人で帰る」
「なんでだよ!おい莉都、待っ…!」
なんで。俺なんかした?今まで泣いてたのに、荷物を爆速でまとめて走って帰ってしまった。俺は追いかけることもできず、ただ呆然と立っているだけ。クラスメイトが教室に入ってきて、聞く。
「あれ、莉都は?」
「帰った」
「まじか。今日遊ぶ約束してたのに」
遊ぶ約束?莉都がそんなこと…。それに、だったらなんで泣く必要があるんだ。莉都を泣かせたのはもしかして、こいつ?
「莉都、さっき泣いてたんだけど理由知ってる?」
あくまで自然に。聞くだけ、聞くだけ…。
「泣いてた?まじ?えーなんでだろ」
勝手に友だちみたいな顔しやがって。なんだよお前。俺、こいつの名前も知らねえのに。莉都はこんな奴と仲良くして、遊ぶ約束までしてんのか。俺に言ってもないのに。俺は、莉都と付き合ってんじゃないのか?
「莉都、俺がなんか嫌なことしてたらごめん。何があったかだけ教えて欲しい」
1人で家に帰り、莉都にこう送った。
「別に」
「レンは悪くない」
秒で返ってきたところを見ると、莉都も暇してたんだと思う。
「何があったの?」
「だから、言ったじゃん」
「男同士なんておかしいんだって」
いいだろ別に、気持ちの問題だろ。俺らに何の問題があるんだよ。そう思ったけど、今そんなこと言ったらまた話してくれなくなりそうなのでやめた。
「だからって俺のこと嫌いにならないよな」
「レンは、友だちだから」
俺はスマホを持ったまま硬直した。今、莉都にとって俺は「友だち」なんだ。この前まで、あんないろんなことしてたのに。
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