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「胡桃沢くんは今日お休みです」
「はっ、なんで」
先生が発した言葉に驚いて俺は声を上げた。今日来ないなと思ってはいたけど、遅刻だと思って…。
「風邪だと言ってました」
なんで俺に連絡してくれなかったんだよ。学校に連絡するより先に俺になんか言えよ。そしたら昨日のうちに見舞いに行ったのに。ふざけんな風邪とかやらかしやがって。なんだよ。寂しいじゃねえか。俺友達いないんだよ……。
授業が終わってすぐ、俺は帰宅部で鍛えた脚力をフル稼働させて莉都の家に走った。インターホンを鳴らすと莉都のお母さんが出てきて、寝てるみたいだけど叩き起こしていいからねと病人の母とは思えないことを言った。そう言われたとはいえ、そんなのは莉都がかわいそうだと思って一応莉都の部屋には入らず、声をかけた。
「莉都、生きてる?」
返事がないから寝てるのかなと思ってそっとドアを開ける。熱で赤く火照った莉都を見て、なんだか安心した。1日顔を見れないだけでこんなに不安なんだ。俺、莉都依存症かも。
「ここ、ゼリーとかいろいろ買ってきたから置いとくね」
来る途中のコンビニで爆速で買ってきたやつ。机の上に置いてから立ち上がり、ベッドの端に腰掛けた。起こしちゃうかな。
「莉都、はやく元気になれよ。それから、調子悪いならすぐ俺に言って。俺すぐ飛んでくるからさ」
欲望に抗えなくて莉都の頭を撫でながらゆっくり話す。
熱でぼやけた視界に、見覚えのある顔が見えた。
「…れ、ん?」
「うわ、起こしちゃったごめん」
「なんで来たの……」
「え?」
「来てほしくなかったのに」
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