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なぜ倉本が泣くのだろうか?
倉本は、まるで自分の身に起きた事のように切ない声で泣き続ける。
いつまでも泣き止まない倉本へ、奈緒はそっとハンカチを差し出した。
そこで一度深呼吸をしてから言った。
「倉本さん、ありがとう。ずっとね...ずっと考えていたの。なぜあの事故の時に、徹の隣に三輪さんがいたのかって...。
まあ普通に想像すれば、そういう事なんだろうなって分かるわよね。
でもね、出来れば本人の口からはっきり聞きたかったわ。でも事故で二人とも死んでしまったでしょう? だから結局聞けずじまい。
それでずっと悶々としていたの。
怒りたいのに怒る相手はもうこの世にはいなくて、真相を知りたいと思っても
知る術もなくて.....でもね、今倉本さんの話を聞いて、真実が少しだけ分かったような気がします。ありがとう。ずっと心に溜めて辛い思いをさせてしまったわね...ごめんなさいね...」
奈緒はそう言って弱々しく笑った。
「麻生さんが謝る必要はないですっ! ごめんなさいっ......私...せっかく優しくしてもらったのに......本当ならもっと早く麻生さんに知らせておけばよかったと...ずっと後悔していて......うぅっ......」
そこでまた倉本が激しく泣き出した。
「ううん、いいのよ...教えてくれて、本当にありがとう...」
奈緒の言葉を聞いた倉本は、泣きながら少しホッとした表情になった。
そして涙を拭きながら言った。
「江崎さんは、本当に麻生さんの事を愛していらっしゃいました。実は、私が江崎さんと三輪さんを観察するようになって気づいた事があるんです。それは、江崎さんが奈緒さんを見つめる時、いつも凄く優しい表情をしていたんです。あんな優しい表情は、本当に愛している相手にしか向けられないなって思えたんです。だから麻生さんは間違いなく江崎さんに愛されていたと思います」
それを聞いた奈緒の頬に、一筋の涙が伝った。
泣かないようにじっとこらえていたが、
倉本の言葉を聞いて、とうとう涙が溢れ出てしまった。
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