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それから一ヶ月半が過ぎた。 奈緒はすっかり新しい会社に馴染み、 秘書の仕事にもすっかり慣れていた。 ボスである省吾の性格や癖、習慣なども だいぶ把握してきた。 相手のタイプを見極めてしまえば、 そこからは奈緒の本領発揮だ。 サポート業務に関して自信がある奈緒は、様々な工夫を凝らし、 省吾がいかに仕事をスムーズに処理できるかを考え、 効率の良い仕組みを構築していった。 お陰で、最近の省吾は少し時間に余裕が生まれていた。 COOの公平も、人事部長の杉田も、 奈緒の仕事ぶりをかなり評価していた。 そして、奈緒のボスである省吾自身も、 奈緒が秘書として来てくれた事により、 以前よりもかなり効率よく仕事が進んでいる事を 実感していた。 そんな中、秘書室にノックの音が響いた。 「どうぞ!」 奈緒が返事をすると、ドアが開き名取美沙が入って来た。 奈緒は美沙を見て、 『あっ、面接の時の人だわ...』 と、すぐに気づく。 一瞬美沙と目が合ったので、奈緒は軽くお辞儀をした。 奈緒は社内で何度か美沙を見かけた事があったが、 秘書室で会うのは初めてだった。 一方、さおりと恵子は美沙を見て一瞬ギョッとした顔をしていた。 しかしすぐに穏やかな表情へ戻ると、さおりが言った。 「あら名取さん、珍しいわね! 何かご用ですか?」 「アルコール消毒液の補充に来ました」 「ああ、ご苦労様! お願いしますね!」 さおりはにこやかに美沙に言う。
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