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その二日後、奈緒はいつものように出社した。
しかしその日はなんだか、いつもと違う空気を感じていた。
エレベーターを待っている時、
他の部署へ行き用事を済ませている時、
廊下を歩いている時、
なぜかいつもよりも多くの視線を感じていた。
前の会社で徹との事が知れ渡った時のような、
重々しい空気だった。
この日ランチは、さおりと恵子と三人で外の店で食べた。
ランチを終えて外から社内へ戻った時も、
その違和感がずっとつきまとう。
きっと気のせいだろうと思い、
奈緒は気にしないようにしながら仕事を続けた。
午後、省吾から頼まれた書類を経理部へ持って行った際、
やはりまたちらちらと奈緒の事を見る社員がいる事に気付く。
気になった奈緒は、秘書室へ戻る途中化粧室へ寄り、
鏡で全身をチェックする。
しかし、特におかしい所はないようだ。
『やっぱり気のせいかしら......?』
奈緒はそう思いながら、秘書室へ戻った。
奈緒が秘書室へ入ろうとした時、
ちょうど中から人事部の水戸が出て来た。
水戸は奈緒が入社初日に、人事部で紹介された女子社員だ。
奈緒と目が合った水戸は、
「頑張ってるわね! お疲れ様!」
と言うと、ニッコリ微笑んでから廊下を歩いて行った。
奈緒もお疲れ様と声をかける。
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