8

9/23
前へ
/342ページ
次へ
そんな奈緒に、恵子がティッシュの箱を差し出す。 奈緒は恵子に頭を下げてからそれを受け取ると、 涙を拭き始めた。 「この間ランチの帰りに、奈緒ちゃんがお知り合いに声をかけられたでしょう? あの後、奈緒ちゃんの様子が変だったから、何かあったのかなって思ってたのよ。でもさ、まさかそんな事があったとは思わないじゃない? 辛かったよね...でもね、辛い時は無理しなくていいのよ。しんどかったらいつでも私達に言いなさい!」 続いて恵子も言った。 「奈緒ちゃん、頑張り過ぎると壊れちゃうよ。私もね、以前辛過ぎて壊れかけた事があったんだ。でもこの会社に来て救われたのよ。だから辛い時は、いくらでも私達を頼って! 私はあまり頼りにならないけれど、さおりさんに相談すればほとんどの事は解決するから!」 それを聞いたさおりが言った。 「あらあら、褒められて嬉しいわ~! でも私が誰かを頼りたくなったら、一体誰を頼ればいいのよぉ~?」 「さおりさんは息子さんも成人した事だし、そろそろ新しい出会いを見つけたらいかがですかぁ~?」 「じゃあ恵子ちゃんが紹介してよぉ~! 私、イケメンのお金持ちじゃないと無理だから!」 「えー? 50女でその条件は図々しくないですかぁ?」 「ハッ? 何言ってんのよっ! 私のお肌はまだギリアラフォーくらいのピチピチお肌よっ!」 それを聞いた恵子が、けらけらと笑い出す。 そして続けた。 「さおりさんには、CTOの原田さんがピッタリだと思うんだけれどなぁ...」 「ハッ? 原田さんっ? ハァッ? 無口でむっつり系の男が、どうして私に合うのよっ! それにあの人50過ぎているのに独身でしょっ? きっと変な性癖があるかもしれないわっ!」 「あはは、考えすぎですよぉ~! それにさおりさんには、ああいった頭脳明晰なタイプがぴったりだと思いますよ! 口じゃ誰もさおりさんにはかなわないから、理論で攻めて来るような理知的なタイプが、さおりさんにはお似合いなのにぃ~!」 そう言って恵子が楽しそうに笑う。 二人のやり取りを聞いていた奈緒も、思わず笑ってしまった。 奈緒が笑ったのを見て、二人も笑い出した。 秘書室には三人の笑い声が響き渡る。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9357人が本棚に入れています
本棚に追加