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そんな奈緒に、恵子がティッシュの箱を差し出す。
奈緒は恵子に頭を下げてからそれを受け取ると、
涙を拭き始めた。
「この間ランチの帰りに、奈緒ちゃんがお知り合いに声をかけられたでしょう? あの後、奈緒ちゃんの様子が変だったから、何かあったのかなって思ってたのよ。でもさ、まさかそんな事があったとは思わないじゃない? 辛かったよね...でもね、辛い時は無理しなくていいのよ。しんどかったらいつでも私達に言いなさい!」
続いて恵子も言った。
「奈緒ちゃん、頑張り過ぎると壊れちゃうよ。私もね、以前辛過ぎて壊れかけた事があったんだ。でもこの会社に来て救われたのよ。だから辛い時は、いくらでも私達を頼って! 私はあまり頼りにならないけれど、さおりさんに相談すればほとんどの事は解決するから!」
それを聞いたさおりが言った。
「あらあら、褒められて嬉しいわ~! でも私が誰かを頼りたくなったら、一体誰を頼ればいいのよぉ~?」
「さおりさんは息子さんも成人した事だし、そろそろ新しい出会いを見つけたらいかがですかぁ~?」
「じゃあ恵子ちゃんが紹介してよぉ~! 私、イケメンのお金持ちじゃないと無理だから!」
「えー? 50女でその条件は図々しくないですかぁ?」
「ハッ? 何言ってんのよっ! 私のお肌はまだギリアラフォーくらいのピチピチお肌よっ!」
それを聞いた恵子が、けらけらと笑い出す。
そして続けた。
「さおりさんには、CTOの原田さんがピッタリだと思うんだけれどなぁ...」
「ハッ? 原田さんっ? ハァッ? 無口でむっつり系の男が、どうして私に合うのよっ! それにあの人50過ぎているのに独身でしょっ? きっと変な性癖があるかもしれないわっ!」
「あはは、考えすぎですよぉ~! それにさおりさんには、ああいった頭脳明晰なタイプがぴったりだと思いますよ! 口じゃ誰もさおりさんにはかなわないから、理論で攻めて来るような理知的なタイプが、さおりさんにはお似合いなのにぃ~!」
そう言って恵子が楽しそうに笑う。
二人のやり取りを聞いていた奈緒も、思わず笑ってしまった。
奈緒が笑ったのを見て、二人も笑い出した。
秘書室には三人の笑い声が響き渡る。
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