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上層部が揃ったところで、人事部長の杉田がマイクを持って話し始めた。
「えー、忙しい時間にすみません。今朝集まってもらったのは、社内において事実無根の噂を広められている社員がいると耳にしたので、その件についてお話ししたいと思います」
杉田はそう言うと、集まっている社員達をぐるりと見回してから
奈緒を見つけると、声をかけた。
「麻生さん、ちょっとこっちへ来て下さい」
「えっ?」
びっくりした奈緒は思わず声を出す。
恵子も驚いていた。
さおりは落ち着いた表情で奈緒に言った。
「奈緒ちゃん行ってらっしゃい! 上は悪いようにはしないわ...」
「......」
奈緒は突然の事にかなり戸惑っていたが
さおりに言われたので仕方なく杉田の方へ歩いて行く。
皆の視線が痛いほど刺さり、緊張で胸がドキドキしていた。
「麻生さんごめんね、ちょっとだけお付き合い下さい」
杉田はそう言うと、自分と省吾の間に奈緒を立たせた。
「言わなくてももう分かりますよね? 彼女は秘書課の麻生さんです。まだ入社して一ヶ月ちょっと。入社以来、凄く良く頑張ってくれています。そんな彼女に対する誹謗中傷が、ここ最近酷いらしいんだ。
うちの会社は、こういう問題にはすぐに対処します。今までもそうしてきましたから、今その噂の出所を調査中です。
大体は掴んでいますがもうちょっと聞き取り調査をしたいので、もし呼ばれたら速やかにご協力をお願いします」
すると、その場にいた社員達に動揺が広がる。
フロア内がザワザワと騒めき始めた。
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