銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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翌日、奈緒は出社した。

奈緒が勤めている会社は、大手通信会社の株式会社KDSDだ。
奈緒は大学卒業後、ずっとこの会社で働いていた。

奈緒は現在31歳。
入社時は、営業推進本部に配属されていたが、
先月経理部に異動したばかりだ。

経理部に異動になったのには理由がある。

それは、奈緒が簿記二級の資格を持っていた事と、
もう一つ、理由があった。

奈緒は、営業推進本部のエース、
江崎徹(えざきとおる)と交際していたからだ。

二人は近々正式に婚約し、結婚する予定でいた。
付き合っている事は、まだ一部の人間しか知らなかったが、
結婚した後も働く予定でいた奈緒は、異動の希望を出していた。

その時、ちょうど経理部に欠員が出た。

経理の仕事は地道な作業だが、
コツコツと真面目に働く奈緒には向いていた。

営業推進本部での仕事は、いつ急な残業を頼まれるか分からない。
それに比べ、経理部での仕事は忙しい繁忙期を除けば
ほとんど定時で帰れる。

結婚して主婦業と両立するには、
経理部の方が働きやすいかもしれない。
そう思った奈緒は、上司の加賀から推薦してもらい、
経理部へ移った。

しかし、折角の異動も無駄に終わった。

なぜなら、婚約者の徹は先月交通事故で亡くなってしまったからだ。