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省吾のたった一言が、
一瞬にして奈緒を取り巻く環境をガラッと変えてしまったのだ。
奈緒は省吾の影響力に驚いていた。
誰もいないエレベーターへ乗り込むと、
奈緒は一階のボタンへ指をかざす。
するとエレベーターはスーッと動き始めた。
途中29階で止まり、一人の社員が乗り込んで来た。
その社員は、奈緒が入社初日にエレベーターで一緒になった若者だった。
確か、人事部長の杉田が『井上君』と呼んでいた気がする。
茶髪にピアス、今時の若者といった服装が印象的で、
奈緒もよく覚えている。
エレベーターに乗り込んで来た井上は、奈緒を見ると、
「お疲れっす!」
と声をかけてきた。
奈緒も慌てて、
「お疲れ様!」
と声をかける。
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