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「うちの会社の上層部は信頼できる人ばかりっすよ。俺が保証します。だから安心して下さい! この会社はちゃんと社員を守ってくれますから!」
井上はニッコリして言った。
「はい...ありがとうございます」
「あっ、でも麻生さんなら、深山さんに直接言った方が早いっすね!」
井上はからかうように奈緒に言うと、再び笑った。
その顔はとてもチャーミングだった。
「ご心配ありがとうございます」
その時、エレベーターが一階に着いたので、
井上は、
「お先っす!」
と言って歩いて行った。
『フフッ、私よりも若いのに、心配してくれて優しいのね...』
奈緒の心がほんわかとあたたかくなる。
ビルの外へ出ると、空には細い月が浮かんでいた。
オレンジ色の月は、今にもビルの向こうへ沈もうとしていた。
『今日のお夕飯は何にしよう?』
奈緒はそう思いながら、
久しぶりに明るい気分で、駅までの道のりを歩き始めた。
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