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翌日も、省吾は朝ほんの一瞬顔を出しただけで、 ほとんど社外へ出ていた。 この日奈緒は、省吾から頼まれた入力業務と書類の整理を終えると、 役員室の掃除を徹底的にする事にした。 床掃除は定期的に業者がやってくれるが、 それ以外の場所は、うっすらと埃が目立つ。 観葉植物の葉にも埃が積もり、 これでは植物も光合成がしにくいだろう。 奈緒は葉についた埃を濡れた布巾で拭い、 他の場所も徹底的に拭き掃除をする。 書類が散乱した机の上や棚も、綺麗に整えていった。 その努力の甲斐もあり、かなり快適なオフィスになった。 満足気に役員室を眺めた後、 奈緒は自分のデスクへ戻り、いつもの仕事に戻る。 最近、省吾宛ての新規の電話が増えていた。 省吾への面会を希望する取引先が後を絶たない。 奈緒は、スケジュールでいっぱいの省吾の日程を 何とかやりくりしながら、面会希望者の予約を受け付ける。 しかしここ最近、スケジュールにも限界が迫っていた。 奈緒が働き始めた頃よりも、 省吾のスケジュールはタイトになっていた。 以前、省吾との会話でこんな事を聞いた。 『夜ぼーっとしている時に、結構アイディアが湧くんだよ。だからなるべく夜はのんびりしたいんだ』 奈緒はその言葉を覚えていた。 だからなるべく夜はフリータイムを多く設けてあげたいと思っていたが、 今のところ、ぎっちりと会食やパーティーで埋まっていた。
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