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そこで奈緒は、先週あたりから色々と工夫をこらしていた。 今まで夜の会食をしながら商談をしていた取引先や、 夜の時間帯に面会を申し込んでくる相手に、 比較的省吾が暇な午前中へ変更してもらえるよう働きかける。 相手がどうしてもと夜の時間帯を希望してきても、 やんわりとそれを跳ねのけ、なるべく午前中へ変更してもらう。 奈緒は失礼のないように穏やかに対応しつつ、 それでも受け入れられないものに関してはきっぱりと跳ねつける。 その有無を言わさぬ態度で、段々相手も折れてくる。 とにかく、奈緒は相手に根気よく、 今省吾がかなり多忙であるという事を丁寧に説明した。 すると、徐々に午前中へ変更してくれる取引先が増えていった。 そして、省吾のタイト過ぎた夜のスケジュールに、 多少余裕が生まれてきた。 そして、今、奈緒は、 長い期間付き合いのある取引先の社長との電話を終えようとしていた。 「日村(ひむら)様、ありがとうございます。ではその日、午前10時にお待ちしております。はい、その件は深山に申し伝えておきますので...はい、ありがとうございます。では失礼いたします」 奈緒が電話を切ると、さおりと恵子が感心したように奈緒を見ている。 「今の、日村ネットワークスの社長さんでしょう? あの社長、夜の会食じゃないと駄目だっていっつも言ってたのに、午前中に変更できたの?」 「はい」 「えーっ! あの社長頑固なのに、奈緒ちゃんどんな魔法を使ったのー?」 さおりに続いて恵子も言った。
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