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社内秘書が外に出るチャンスがあるなどとは 思ってもいなかった奈緒は、ワクワクしていた。 まるで社会科見学に行く子供のようだ。 普段やっているサポート業務は、それはそれでやりがいがある。 しかし自分がサポートをしているボスが、 実際にどんな仕事をしているのかとても興味があるし、 それをこの目で見られると思うと、楽しみで仕方ない。 前の会社では、現場へ行く事は全くなかったので、 余計にだ。 秘書室へ戻った奈緒は、その事を二人に伝えた。 「へぇ...確かに宅配便会社の裏側ってあんまり見る機会がないから楽しそうね! なんか社会科見学みたい!」 「はい、私もそう思いました!」 奈緒がニコニコして言うと、今度は恵子が言った。 「宅配便業界も、今は人手不足でかなり大変みたいですもんね~。彼が言ってたんですが、今は荷物は当たり前のようにすぐ届くけれど、この先人手不足が進むと、平気で一週間かかるとか普通になって来るよって言ってました。だからネットショップで買い物をしても、すぐに届かない時代が来るんだろうなぁ~」 「それはあるかもね~!」 さおりは頷きながら言うと、さらに続けた。 「まあ奈緒ちゃんも入社してもうすぐ二ヶ月だし、いい気分転換になるわね」 そこで奈緒が二人に聞いた。 「お二人は、今までボスに同行して外出した経験ってあるんですか?」 「あるある~! 最近はめっきりなくなったけれど、前は会食に同行したり、展示会に行ったり...」 「私も展示会が多いかなぁ? あとはゴルフにお供した事もあるわよ。私、大学時代ゴルフ部だったから...」 「うわぁ、恵子さん凄い!」 「でもさぁ、ご一緒した取引先の社長さんよりもいいスコア出しちゃってねぇ...それ以降ぱったり呼ばれなくなったわ!」 恵子はペロッと舌を出して言った。 そこで、奈緒とさおりが声を出して笑った。
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