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それから奈緒は、その日の急ぎの仕事を全て片付けると、
化粧室へ向かった。
そろそろ出かける三時が近づいていたので、
少し身なりを整えようと思ったからだ。
化粧室へ入ると、全身をチェックしてから、
化粧を直した。
今日の奈緒の服装は、上品なオレンジ色の麻のセーターに、
ベージュの膝丈のフレアースカートを履いている。
首には小さなハート形のペンダントトップがついた、
18金のネックレスをつけていた。
これは前の会社にいた時に、自分で買った物だ。
奈緒は、自分にはシルバー系よりも、
ゴールド系の色味の方が似合うと思っていた。
『取引先に行くのなら、もうちょっときちんとした格好をしてくれば良かったな...』
そう思いながら、小さくため息をついて髪型を整える。
今夜は、省吾と食事に行く約束をしていたので、
着心地の良いラフな服を選んでいたのだ。
『ま、しょうがないか...』
奈緒は心の中でそう呟くと、ブラシをポーチの中へしまう。
そしてもう一度鏡に映る自分の姿を見た。
髪はこの前の休日に、美容院へ行き少し明るめに染めていたので、
オレンジ色のセーターによく映えていた。
徹の件以来、少し体重が落ちていた奈緒は、
普段よりも少しほっそりとしていた。
しかしそれが返って、元々大きかった奈緒の瞳を
更に大きく見せていた。
奈緒はもう一度全身をチェックしてから、秘書室へ戻った。
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