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すぐに駐車料金を精算すると、
省吾は奥に停まっているアメリカ製のEV車の前へ向かう。
アメリカの実業家が作ったその車は、
一時期かなり話題になっていた。
もちろん奈緒も知っている。
スタイリッシュで洗練されたデザインは、
まるでアメリカ映画に出てくる未来の車のようだ。
色は落ち着いたシルバーで、とても品のある車だった。
「EV車なんですね」
「うん...普段はSUV車なんだけれど、これは話題の車だったんでちょっと試しに乗ってみたくてね。でも、近々手放す予定なんだ」
「えっ? まだ新しいのに?」
「うん。乗ってみて分かった。やっぱり日本にはハイブリッド車の方が向いているなって...」
省吾はそう言うと、
助手席のドアを開けて奈緒に乗るよう促した。
「失礼します」
奈緒は車へ乗り込むと助手席へ座る。
社内には、まだ新車の香りが漂っていた。
乗って驚いたのは、運転席の仕様だ。
この車には、普通の車にあるような機器類が全くついていない。
ハンドル以外にあるのは、インパネ一つだけだった。
メーター類は、このインパネに全て集約されているようだ。
そのあまりにもシンプルな車内は、
未来の車というよりは、宇宙船といった方がふさわしいかもしれない。
奈緒が驚いて車内を見ていると、
省吾は運転席へ乗り込んで来て、車をスタートさせた。
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