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省吾は時折インパネを指でタッチしながら運転を続ける。
奈緒がその様子を珍しそうに見ていると、
「EV車は初めて?」
と聞いた。
「はい...凄く静かでスムーズな動きですね」」
「うん、そうだね...。奈緒は車の運転はするの?」
「免許は持っていますが、ペーパードライバーです」
「そっか...」
省吾はそう言うと、軽快にハンドルを握る。
「海で会った時、家は近くだって言ってたよね? あそこから前の会社まではかなり距離があったんじゃない? なぜあんな遠くに?」
「あの街には大学時代から住んでいたんです。実家が千葉の海の近くなので、海があると落ち着くっていうか...だから就職しても引っ越さなかったんです」
「そうかぁ...海、好きなんだね」
「はい...」
省吾は穏やかな表情で運転を続ける。
車は国道を西へ向かって走り続けていた。
奈緒はこれから行く『昭和運輸』の場所を、昼休みに地図で調べていた。
この国道をもう少し進み、どこか途中で右に曲がるはずだ。
そこをまっすぐに進めば、右手に見えてくるはずだ。
会社からはざっと一時間くらいで着くだろう。
ドライブはとても快適で、乗り心地は最高だった。
省吾の運転は上手かった。
普段から車に乗り慣れている人の運転の仕方だった。
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