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奈緒は窓の外を眺めながら、 車に乗るのはかなり久しぶりだという事に気付いた。 最後に乗ったのはいつだっただろうか? 記憶を辿っていくと、 徹と新居を探しに行った時に、 都内のあちこちを巡ったのが最後だと気付く。 二人は新居を探す際、不動産屋へ行く前に 目ぼしい物件を自分たちの足でチェックしていた。 奈緒が徹の助手席に乗ったのは、あの時が最後だった。 そして奈緒はふと気付く。 奈緒の指定席である助手席に、 最後に乗ったのは自分ではなかった。 徹の車の助手席に最後に乗ったのは、三輪みどりだったのだ。 その時、奈緒の胸がズキンと痛む。 奈緒が静かなので、省吾はちらっと隣へ視線を向ける。 すると、奈緒が少し沈んだ表情をしていた。 省吾はなんとなく気付いていた。 奈緒が亡くなった恋人を思い出している事に...
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