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そこで省吾はあえて明るく言った。
「そう言えば、君の噂を流した犯人を見つけたよ!」
それを聞いた奈緒は、急に現実に引き戻される。
「えっ? 誰ですか?」
「人事部の名取美沙さんって知ってる?」
「あ、はい...たしか面接の時に案内してくれた人ですよね? えっ、まさか彼女が?」
「うん、本人は認めていないけれど、聞き取り調査では、ほぼ彼女と確定した」
「えっ? でもななぜ?」
「君の前の会社に知り合いがいたらしい。彼女はね、ずっと秘書の座を狙っていたんだよ。だから秘書に採用された君の事を何としても蹴落としたかったんだろう。でもね、被害にあったのは君だけじゃなくて、今まで秘書の面接に来ていた女性達にも、色々と妨害行為をしていたようなんだ」
「なんでそんな事を...」
奈緒がショックのあまりそう呟くと、省吾が穏やかに言った。
「びっくりしちゃうよね。でも、事実なんだ」
奈緒は驚いていた。
自分が秘書をしたいがために、他人に嫌がらせをする?
奈緒は彼女の行動が全く理解できなかった。
「彼女はこれからどうなるんですか?」
「西東京にあるデーターセンターへ異動してもらうよ。まあ、彼女の自宅は田園調布にあるらしいから、通うのは無理だろうな。引っ越してまで異動を受け入れるとも思えない。だからおそらくそのまま退職になるんじゃないかな...」
「............」
奈緒はそれ以上もう何も言えなかった。
プライドの高い彼女の事だ、
省吾の言う通り、退職する事は目に見えている。
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