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「まあそういう事なので、もう変な噂は流れないと思うので安心して下さい」
「はい...ありがとうございます」
奈緒は省吾に向かってぺこりとお辞儀をした。
一昨日エレベーター内で井上が言っていた通り、
会社は奈緒の事を守ってくれた。
その事実に、奈緒の胸がジーンと熱くなる。
車は大きな渋滞に巻き込まれる事なく、順調に進んでいた。
その後、大きな交差点に差し掛かると車は右折してから、
片側一車線の通りを走り始める。
奈緒はこの辺りに土地勘が全くなかったので、
興味深げに窓の外を見つめていた。
都心にくらべると緑も多く自然豊かだ。
そんなのどかな道を走っていると、
やがてプレハブのような大きな建物が見えてきた。
どうやらそこが物流センターのようだ。
「着いたよ! ここが昭和運輸の物流センターだ。昭和運輸は、今のところ業界三位なんだけれど、そこへうちのシステムを導入して、五年以内には業界一位へ押し上げる計画だ! 今日は社長も来ていると思うので、そのつもりで...」
「はい、わかりました」
奈緒は少し緊張した。
そして省吾に聞く。
「何かメモを取ったりした方がいいですか?」
「大丈夫! これがあるからね!」
省吾はそう言って、小さなボイスレコーダーをポケットから出した。
なんとも準備がいい。そして合理的だ。
省吾は今まで全てを一人でやってきただけあり、準備には抜かりがなかった。
車を駐車場へ停めると、二人は車から降りて
物流センターの入口へと向かった。
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