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大きな建物の入口の脇に、事務所があった。 二人が歩いて行くと、奥から60歳前後の男性がにこやかに歩いて来た。 「深山さん、忙しい中お越しいただきありがとうございます」 グレーのスーツを着た白髪交じりの男性は、そう言って二人の前に立った。 そして男性の隣には、奈緒と同年代の女性が立っている。 秘書だろうか? 奈緒は一瞬そう思ったが、 その華やかな装いからすると、彼女が秘書でない事は明確だった。 「西田社長、本日はよろしくお願いします」 省吾は笑顔で軽く会釈をする。 すると西田は頷いてから、奈緒の方を見た。 「こちらは?」 「秘書の麻生です」 そこで省吾が奈緒をチラリと見たので、 奈緒は西田に挨拶をした。 「麻生です。本日はよろしくお願いいたします」 そう言って丁寧にお辞儀をする。 「ほぉ~...深山さんもとうとう秘書をおつけになられましたか! そうでしたか! そりゃあちょっと遅かったなぁ...。いやね、うちの娘がちょうど働きたいと言い始めましてね...それで、深山さんが秘書を探しておられると聞いたので、どうかなぁと思い連れて来たんですよ...娘は大学を出てからはずっと家事手伝いしていましたが、なんですか? 秘書検定? とかいう資格を持っているって言うんで...」 西田はそう言って隣にいる娘の方を向いて聞いた。 「秘書検定何級だっけ?」 「2級ですわ! お父様!」 西田の娘はそう言って微笑んだ。 そして娘は自己紹介を始めた。
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