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「初めまして、西田玲香です。今日は深山さんにお会い出来て光栄ですわ!」 玲香は笑顔でそう告げると、省吾を羨望の眼差しで見つめる。 玲香は白地に赤の花柄の入った、華やかなワンピースを着ていた。 ワンピースの胸元はカシュクールで大胆に開いている。 そのデザインは、玲香の豊満な胸を強調していた。 倉庫のような物流センターでは、その服装はかなり浮いていた。 しかし、玲香の育ちの良さが滲み出たその華やかな雰囲気に、 思わず奈緒は圧倒されていた。 「初めまして、深山です」 省吾が玲香に挨拶をすると、奈緒も軽く頭を下げる。 省吾に見つめられた玲香は、思わず頬をポッと赤く染めた。 そして、うっとりとした様子で省吾を見つめ返している。 奈緒はここで初めて、省吾のモテっぷりを目の当たりにした。 省吾の笑顔は、プライドの高そうなお嬢様でさえもあっという間に 虜にしてしまう。 まさに秒殺だ。 奈緒は思わず感心したように省吾を見つめた。 それからは、西田が施設の案内をしてくれた。 大きな建物内は、目的ごとのブースに分かれている。 どのブースにも、大きなラックがいくつも設置されていて、 全国から集まった荷物は、そのラックに日付ごとに区分されていた。 届いた荷物は、キャリー付きの台車に載せられ、 ガラガラと大きな音をたてて運ばれて行く。 建物内では、台車の金属音があちこちで響いていた。 荷物の中には、冷蔵や冷凍品などもある為、 壁側には大きな冷蔵庫と冷凍庫が設置されていた。 西田が説明をしながら先頭を歩き、その後ろを省吾が歩く。 玲香は省吾の脇にぴったりと寄り添いながら歩いていた。 奈緒はというと、三人から数歩下がって歩き、 興味深げにセンター内を見学していた。
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