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「深山省吾って聞いた事あるだろう? その会社は、彼がやっているIT関連の会社なんだ」 『深山省吾......あっ、聞いた事があるかも...! 確か今IT業界で最も注目されている敏腕経営者だったような...?』 奈緒はそう思うと、加賀に言った。 「はい、耳にした事はあります。あまり詳しくは知りませんが、IT業界ではかなり有名な方ですよね?」 「そう! そうなんだよ! 彼とは長い付き合いでね...経営者としてはまだ若いけれど、ガッツがありなかなか信頼できる男なんだ。 昨日彼の会社が経理部の社員を募集していると聞いて、君にどうかなと思ったんだよ。 会社の規模はうちよりは小さいけれど、君はこれから仕事に打ち込みたいと言っていたろう? だったら、社員の平均年齢が若くて活気がある、まだまだこれから伸びしろがあるこういう会社で働いてみたらどうかなと思ったんだよ。君さえよければ話を通すから、一度面接を受けてみたらどうだ?」 奈緒はかなり驚いていた。 まさか出社の最終日に、加賀から転職先を紹介されるとは 思ってもいなかったからだ。 驚くと同時に、感謝の気持ちが溢れて来る。 正直、30歳を過ぎてからの就活に、少し不安を覚えていた。 20代ならまだしも、31歳での転職はかなり苦戦する覚悟をしていた。 今よりも確実に、給与面・条件面でかなり厳しくなるだろう。 これから一人で生きていかなくてはならない奈緒にとって、 それはあまり直視したくない現実だった。 しかし、今、加賀が紹介してくれた会社は、 業界の中でも給与が高い事で有名だ。 福利厚生にもかなり力を入れていて、社員の働き方改革にも積極的に取り組んでいると、以前何かで耳にした事がある。 その会社は、理系新卒学生なら誰もが憧れる会社だった。 そんな所へ、中途入社出来るチャンスなんて、おそらくもう二度と訪れる事はないだろう。
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