10

11/16
前へ
/342ページ
次へ
そこで玲香は隣で話し込んでいる二人をチラリと見た後、 更に顔を近づけてから奈緒に小声で聞いた。 「深山さんって、おモテになるでしょう?」 いきなりそんな事を聞かれたので、奈緒はびっくりする。 隣で父親が大切な商談をしているのに、 まさかこんな私的な事を聞かれるとは思っていなかったからだ。 「プライベートの事は...ちょっと分かりかねます...」 奈緒は無難に答えてなんとか逃げた。 「ふーん...でも恋人がいらっしゃるかどうかはご存知でしょう?」 玲香はさらに声を潜めて聞いてきた。 その質問に、奈緒がなんと答えようか悩んでいると、 突然省吾の声が飛んできた。 「玲香さん、彼女にその質問は愚問ですよ!」 その時玲香はビクッとして省吾を見た。 まさか自分の質問が省吾に聞こえているとは思わなかったのだろう。 そして慌てて言った。 「なぜ愚問ですの?」 「ハハッ、実は私は彼女と正式にお付き合いをしているんですよ!」 省吾の言葉を聞いた西田親子は、同時にびっくりした表情をした。 もちろん奈緒も驚いていた。 まさか、取引先の社長に交際宣言をするとは思っていなかったからだ。 そこで西田が声を出して笑い始めた。 「ハハハハッ...そういう事でしたか! なんとまぁめでたい! なっ、玲香!」 「えっ? ええっ...」 玲香はなんともバツの悪そうな顔で父親に答える。 そして、 「わたくし、この後用事がありますので、お先に失礼させていただきますわ」 そう言って、省吾と奈緒に向かってお辞儀をすると、 事務所を出て行った。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9362人が本棚に入れています
本棚に追加