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二人が車に乗り込むと、省吾が奈緒に言った。
「ちょっとだけ待ってもらってもいい? 公平にデータを送りたいんだ」
「どうぞ!」
奈緒が答えると、省吾は頷いてから
先ほどセンター内で撮った写真をスマホで送る。
そして膝の上でノートパソコンを立ち上げると、
しばらくの間、文字を入力する。
五分程その作業を続けると、漸くパソコンを閉じた。
奈緒は省吾が作業をしている間、スマホをいじるふりをしながら
省吾が仕事をする様子をさりげなく見ていた。
無言で集中してパソコンへ向かう省吾の姿を見て、
『この人は本当に仕事が好きなのね...』
と改めて思う。
省吾はシートベルトを締めると、漸く車のエンジンをかける。
「お待たせ! さてと、じゃあ行きますか!」
車は静かに動き出し、先ほど通って来た道を戻り始めた。
「せっかくこっちに来たから横浜にでも寄って行く?」
「横浜?」
「横浜は嫌い?」
「いえ...昔はよく買い物に行っていましたから」
「それはどの辺りの横浜?」
「えっと、みなとみらいの辺り?」
「なるほど...じゃあ今日は元町方面にでも行ってみるか!」
奈緒は昔、元町辺りにもよく買い物に行っていた。
元町商店街には、奈緒のお気に入りの店がいくつかある。
久しぶりにその辺りへ行くと思うと、胸が躍る。
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