9363人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、ハンドルを握りながら省吾が言った。
「俺の姉貴がさ...元町で店をやってるんだ。あ、正確には姉貴の旦那さんがなんだけれどね...そこへちょっと寄ってもいいかな?」
それを聞いて奈緒は驚いた。
『偽装恋人』である自分が、省吾の親族に会っても大丈夫なのだろうか?
奈緒は急に心配になり、省吾に聞いた。
「それは秘書としてついて行けばいいんですよね?」
「いや、一応『恋人』って事で頼むよ」
「えっ? でもご家族を騙すような事はしない方が...」
「全然問題ないよ! あの人はそういうのは全然気にしないから...」
省吾はそう言って微笑む。
しかし奈緒は戸惑っていた。
もし気にしない人だったとしても、
大切な家族に嘘をつくのは良くないのでは?
「大丈夫! 君は普通に隣にいるだけでいいから!」
省吾はそう言うと、なぜか楽しそうだった。
そう言われてしまうと、奈緒はもう何も言えない。
結局、省吾に押し切られる形で、
『恋人』として店へ行く事になった。
やがて車は高速へと入り、横浜を目指して走り始める。
奈緒は不安を抱えながらも、
久しぶりに訪れる懐かしい街へ思いを馳せていた。
最初のコメントを投稿しよう!