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すると、ハンドルを握りながら省吾が言った。 「俺の姉貴がさ...元町で店をやってるんだ。あ、正確には姉貴の旦那さんがなんだけれどね...そこへちょっと寄ってもいいかな?」 それを聞いて奈緒は驚いた。 『偽装恋人』である自分が、省吾の親族に会っても大丈夫なのだろうか? 奈緒は急に心配になり、省吾に聞いた。 「それは秘書としてついて行けばいいんですよね?」 「いや、一応『恋人』って事で頼むよ」 「えっ? でもご家族を騙すような事はしない方が...」 「全然問題ないよ! あの人はそういうのは全然気にしないから...」 省吾はそう言って微笑む。 しかし奈緒は戸惑っていた。 もし気にしない人だったとしても、 大切な家族に嘘をつくのは良くないのでは? 「大丈夫! 君は普通に隣にいるだけでいいから!」 省吾はそう言うと、なぜか楽しそうだった。 そう言われてしまうと、奈緒はもう何も言えない。 結局、省吾に押し切られる形で、 『恋人』として店へ行く事になった。 やがて車は高速へと入り、横浜を目指して走り始める。 奈緒は不安を抱えながらも、 久しぶりに訪れる懐かしい街へ思いを馳せていた。
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