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しばらく歩いて行くと、元町の商店街へ辿り着いた。 「お姉様のお店はこの商店街にあるのですか?」 「うん、そうだよ」 「どういったお店なのですか?」 「ジュエリーショップだよ」 省吾はそう答える。 「へぇ...素敵ですね!」 奈緒は思わず笑顔になる。 この商店街のジュエリーショップと言えば、 数えるほどしかない。 奈緒はそのほとんどを知っている。 省吾の姉が嫁いだ先の宝飾店という事は、 昔からここにある老舗店だろう。 『...という事は、もしかしたらあそこかな?』 奈緒が想像していた通り、省吾が歩みを止めたのは、 老舗宝飾店の前だった。 しかし店を見てみると、奈緒が覚えている店の外観とは、 雰囲気が一変していた。 昔は老舗宝飾店にありがちな、 重厚な感じの古い店構えだったような気がするが、 目の前の店はそれとは全く違いとてもお洒落な店だ。 真っ白なしっくいの外壁にパステルピンクの窓枠。 女性が思わず足を止めてしまうような可愛らしい雰囲気のその店は、 この洒落た商店街にとてもよく馴染んでいた。 そして店のショーウィンドーには、 素敵なジュエリーがセンス良くディスプレイされている。 店名も以前は『松倉宝飾店(まつくらほうしょくてん)』だったと記憶しているが、 今は『bijou MATSUKURA(ビジュー マツクラ)』 と名前を変えていた。 おそらくここ数年の間に、店をリニューアルしたのだろう。 老舗宝飾店は、時代に合ったとても素敵な店に生まれ変わっていた。
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