11

2/27
前へ
/342ページ
次へ
奈緒はこの店にずっと憧れていた。 学生時代から、この店の前を何度も行き来している。 その度に、ショーウィンドーに飾ってある、 気品あふれるジュエリー達に見惚れていた。 とにかく、この店は他の店とは違う。 扱う商品は量産していない為、 どれも一点物に近い。 デザインはシンプルながらもどこか華があるり、品質も良いと評判だ。 たまにファッション雑誌にこの店の特集が組まれる。 有名女優や女子アナにも根強いファンがいて、クリスマスの時期には店の外まで人が溢れているのを、奈緒は何度も目撃していた。 奈緒が徹から贈られたエンゲージリングは、 残念ながらこの店の物ではなかった。 その指輪は、プラチナ製の立て爪のダイヤモンドリングだった。 婚約指輪としてよくあるタイプだ。 もちろん奈緒は嬉しかった。 指輪を贈られた時は、感激して泣いてしまったほどだ。 しかし心のどこかで、いつも思っていた。 もし徹がプロポーズをしてくれたら、この店で指輪を買いたいと...。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9365人が本棚に入れています
本棚に追加