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『これが私の転機になるかもしれない...』
そう思った奈緒は、すぐに返事をした。
「ありがとうございます。是非ご紹介いただければと思います」
奈緒はそう言って丁寧にお辞儀をした。
すると、加賀はホッとした様子でうんうんと頷いていた。
「じゃあすぐに経理部長の村田さんへ連絡しておくよ。面接の日程については、君の携帯に直接かけてもらうよう伝えておくので、そのつもりで!」
「はい。よろしくお願いします」
奈緒はそう言うと、もう一度頭を下げた。
そして顔を上げると、加賀が何とも言えない切ない表情をして言った。
「君には大変辛い思いをさせてしまい悪かった。江崎の上司として、大変申し訳ないと思っている。本当にすまなかった...」
加賀はそう言って深々と頭を下げた。
「いえ...部長は何も悪くありませんから、どうか頭を上げて下さい...」
奈緒は慌てて言った。
すると加賀はゆっくりと頭を上げながら、
「江崎と三輪がそんな事になっているなんて、夢にも思わなかったんだよ...もし気づいていたら、私からガツンと言ってやったのに! 気づけなかった自分が情けなくてね...上司失格だな......」
そう言って淋しそうに笑う。
その時、奈緒は思った。
『徹の件で傷ついているのは、私だけじゃないのね......』
部長の加賀は、奈緒が入社した時から
いつも温かく見守ってくれた。
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