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奈緒はまだ戸惑ったまま、省吾の顔をチラリと見る。 すると省吾が奈緒の耳に顔を寄せて小声で言った。 「『偽装恋人』の小道具だよ! 必須アイテムだろ? 好きなのを選んで!」 そう言われても戸惑いを隠せない。 ここに並んでいるジュエリーの値段は、 ざっと計算しても普通の店の何倍もする。 こんな高価な物の中から、どうやって選べというのだろうか? せめて数万円で買えるようなジュエリーがあれば、 奈緒もすぐに選べたかもしれない。 相変わらず奈緒が固まったままでいると、 省吾と美樹が何やら二人で相談を始めた。 時折、美樹がショーケースから出した品を省吾が見定める。 しかし、省吾が首を振ると、また美樹が新たな物を取り出す。 しばらくその繰り返しが続いた後、美樹が言った。 「奈緒ちゃんはどんなデザインが好き?」 そう聞かれてもなんと答えて良いのか分からない。 奈緒が答えに困っていると、更に美樹が言った。 「存在感のあるデザインか、華奢なタイプか?」 二択なら答えられそうだった。 「華奢なタイプでしょうか?」 「なるほどね...じゃあこの辺りかなぁ...」 美樹が指し示した辺りには、プラチナやゴールド製のリングが いくつも並んでいた。 ダイヤモンドを中心に、ルビーやエメラルド、サファイアなどがついた 素敵なリングがいくつもある。 『うわぁ...素敵......』 奈緒は心の中で呟いた。 やはり美しい宝石は、あっという間に女心を掴んでしまう。 奈緒はしばらくうっとりと、そのジュエリー達を見つめていた。
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