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「あとね、赤い石はお守りや魔除け代わりにもなるとも言われているのよ!」 『お守り...』 奈緒はそのフレーズに思わず惹かれる。 そんな奈緒の反応を見て、省吾が言った。 「折角だから誕生石にしてみる?」 「え? あ、はい......」 「ルビーだったらこの一角にあるわ! あとは、奥にもまだ在庫があったはず...ちょっと待ってて!」 美樹はそう言うとバックヤードへ消えて行った。 その時、隣のブースに立っていたスタッフの田沢が、 近づいて来て奈緒に言った。 「お客様はお肌がとっても白いから、きっとルビーがお似合いになりますよ!」 田沢はそう言ってニコニコしている。 奈緒は、なんだか褒められたような気がしてくすぐったい気持ちになる。 そして田沢に、 「ありがとうございます」 とはにかんで言った。 そんな二人のやり取りを笑顔で見ていた省吾は、 身体を屈めてショーケースの中を覗き始める。 奈緒に似合いそうなジュエリーがないかを 真剣に探している様子だ。 プライベートじゃないと絶対に見られない省吾の様子を見て、 奈緒は思わず微笑む。 普段は仕事の鬼と言われている省吾のこんなシーンを、まさか見られるなんて...。 そして奈緒も何気なくショーケースの中を覗いてみた。 その時奈緒は軽い衝撃を受ける。 なぜなら、目の前にあるジュエリーの値段がかなり高額だったからだ。 それは、奈緒が予想していた値段を大幅に超えていた。 『偽装恋人』の小道具に、こんな高級なジュエリーが必要なのだろうか?
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