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その時、美樹がトレーを手にして戻って来た。 黒いベルベッドのトレーには、ルビーの指輪が8点ほど載っていた。 どれも18金のイエローゴールドのものだ。 「奥に少しあったわ! これか、あとはそのショーケースの中ね! ルビーとイエローゴールドの組み合わせって意外と少ないのよ~」 美樹はそう言って奈緒の前にトレーを置いた。 その瞬間、奈緒の目が一つの指輪に釘付けになる。 それはとてもシンプルな指輪だった。 オーバルカットのルビーが真ん中にあり、 二本に別れたアームがルビーを支えている。 とてもシンプルなのに、なぜか華のあるリングだった。 二本に分かれたアームの隙間から光が差し込むのだろう。 その指輪のルビーは他の指輪よりも輝きが強かった。 取り込んだ光によって、輝きが増しているのだ。 石の高さも低めなので、 普段着けていても邪魔にならないデザインだった。 これなら仕事中にはめていても大丈夫だろう。 奈緒の視線が、その指輪に釘付けになっている事に気付いた省吾は、 姉の美樹に聞いた。 「この指輪って、サイズ直しにはどのくらいかかるの?」 「そうねぇ...急ぎで一週間くらいかしら?」 「そんなにかかるのか...」 省吾はそう呟くと、 さり気なく奈緒の左手を取り、その指輪を奈緒の薬指にはめてみた。 すると信じられない事に、指輪は奈緒の指にぴったりだった。 まるであつらえたようだ。 「あら、ピッタリね!」 美樹が驚いた。 「だな...うん、これにしよう! これでいいか?」 省吾は奈緒に聞いた。 「えっ? でもお値段が......」 奈緒は指輪についた値札を見ながら言った。 指輪の値段は、軽く20万円を超えていた。 まさか『小道具』にそんな大金はかけられない。 困った顔をしている奈緒に、省吾が言った。
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