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「値段は気にしなくていい。これが嫌なら他のも着けてみるか?」 そう言われた奈緒は、他の指輪に視線を向ける。 しかしどの指輪見ても、心が全く動かない。 奈緒は諦めたように、首を振った。 「じゃあこれにするよ!」 省吾はそう言うと、美樹に向かって、 「じゃあこれを頼むよ!」 と言った。 「ありがとうございまーす! 指輪はそのまま着けて行く? それともケースに入れておく?」 「このまま着けて行くよ!」 省吾はそう言うと、財布からカードを取り出して美樹に渡す。 「じゃあジュエリーケースを後で持って来るわね!」 二人を見ながら、奈緒はドキドキしていた。 『なんだか凄い事になってしまったわ...』 そう思いながらも、 左手の薬指に感じる懐かしい感覚に心を奪われていた。 この指に重みを感じると、なぜか心が安らぐ。 ずっと失くしていた落とし物を見つけたような気分だ。 その時奈緒は、右手の指でそっと指輪を撫でた。 『どうか私のお守りになってね...』 そう呟くと、もう一度そっと指輪に触れた。 その時、美樹がショーケースから何かを取り出して、 奈緒の前に置いた。 「じゃあこれは、私からのおまけね!」 「えっ?」 奈緒はびっくりしてトレーの上を見る。 そこには、華奢なイエローゴールドのブレスレットが置かれていた。 繊細な細いブレスレットには、一粒のハート型のルビーがついている。 「指輪とお揃いで素敵でしょう?」 奈緒はびっくりして、 「えっ、でも...」 奈緒が慌てて断ろうとすると、美樹が遮るように言った。
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