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「いーのいーの! 奈緒ちゃん...私ね、本当に嬉しいのよ。弟にこんな素敵な彼女が出来たんですのもの! だからこのくらいはさせて!」 美樹はそう言って微笑む。 「姉貴からのプレゼントなんだ...遠慮しないで受け取るといいよ」 「えっ? でも...」 まだ奈緒が戸惑っていると、 「さっき電話で賢一にも言われたのよ。何かプレゼントしなさいってね! だから大丈夫よ!」 そこまで言われてしまったら、 断るのが申し訳ないような気がして来た。 意を決した奈緒は美樹の方を向くと、 「ありがとうございます。大切にします」 と言って微笑んだ。 美樹はうんと頷いてから、 「じゃあ早速着けてみましょうか?」 と言って、奈緒の左手首にブレスレットを着けてくれた。 「似合うね!」 省吾が微笑んで言う。 「うん! 我ながら良いセンス!」 美樹も満足気に言った。 奈緒は美樹の優しさに、思わず心がジーンと熱くなっていた。 美樹が会計に行き、省吾と二人だけになると奈緒が言った。 「なんか、今日はシンデレラにでもなった気分です」 「たまにはこういう日があってもいいんじゃないか?」 省吾はそう言って微笑む。 奈緒は新しいジュエリーを身に着け、心が弾んでいた。 思っていた以上に自分はジュエリー好きなのかもしれない。 そんな事を思いながら、奈緒は指輪とブレスレットを交互に眺めている。 そんな奈緒の嬉しそうな様子を、省吾は優しい瞳で見つめていた。 会計を済ませた美樹は、省吾にカードを返すと、 自分のバッグを取りに行き、スタッフ二人に先に帰る事を告げた。 それから三人は店を出て、 省吾の車で美樹の自宅へ向かう事にした。 駐車場へ行くと、省吾のEV車を見た美樹が言った。 「あー、やっぱりこの車、買ったのね!」 「うん...でももう手放そうかと思ってる」 「はやっ! 賢一が運転したがっていたのよ! 売るのはもうちょっと待って!」 「ハハッ、だったら今日運転してみればいいのに!」 「真っ暗な中で乗ったってつまらないって言うに決まっているわ!」 二人の間で楽しそうな会話が続く。 二人は本当に仲の良い兄弟なのだなと奈緒は思った。 一人っ子の奈緒は、そんな二人の事が少し羨ましかった。
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