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車へ乗る際、奈緒は助手席を美樹に譲ろうとしたが、 「大丈夫大丈夫! 私は後ろでいいわ!」 美樹はそう言ってさっさと後部座席へ乗り込んでしまったので、 奈緒は恐縮しながら助手席へと座る。 そして車は美樹の自宅へ向けて走り出した。 「奈緒ちゃん、うちはここからすぐなの! だからあっという間よ!」 美樹が言った通り、5分程で美樹の自宅に着いた。 美樹と賢一の家は、山手の閑静な高級住宅街にあった。 「さ、入って入って!」 車を降りた美樹はそう言って奈緒を案内する。 美樹の自宅は、レンガ造りの瀟洒な二階建ての家だった。 真っ白な窓枠や玄関ドアが、アクセントになっていて素敵だ。 美樹は玄関を開けると大きな声で言った。 「ただいま~」 すると、奥から二人の男性が出て来て出迎えてくれた。 「省吾君いらっしゃい! すごく久しぶりだねぇ...」 「おじちゃんいらっしゃい!」 「義兄さん、ご無沙汰しています。冬真、また背が伸びたなぁ...」 そこで、美樹が奈緒に二人を紹介する。 「夫の賢一(けんいち)と息子の冬真(とうま)よ」 「初めまして、麻生奈緒と申します」 奈緒はそう言ってお辞儀をした。 白シャツにグレーのパンツを履いた男性が、美樹の夫の賢一だった。 賢一はとても素敵な紳士だった。 目尻に皺を寄せて笑う様子は、とても優しそうな雰囲気だ。 省吾の甥の冬真は、少し明るく染めた髪にパーマがかかっていた。 その髪型は省吾に似ている。 今時の高校生らしく、とてもお洒落でかなりのイケメンだ。 学校では相当モテるだろう。 すると、賢一が言った。 「お会い出来るのを楽しみにしていましたよ! さぁ、どうぞ中へ!」 「はい...」 そこで五人はリビングルームへ向かった。
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