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仕事に対しては厳しい人だったが、 普段は優しくユーモアに溢れ、社員からの信頼も厚い。 加賀は、若手社員達からは父親のように慕われていた。 加賀は奈緒に父親がいない事を知ると、 更に優しく娘のように可愛がってくれた。 加賀は直属の部下である徹の事も、何かと目に掛けていた。 それだけに、加賀のショックも相当なものだっただろう。 奈緒のせいではなかったが、結果的にこんな事になってしまい、 申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 本当だったら結婚式の仲人は、加賀に頼む予定でいた。 そこで奈緒は、今までの感謝の気持ちを込めて加賀に言った。 「加賀部長、どうかあまりご自分を責めないで下さい...。これからもお身体に気を付けて、営業推進本部のみんなと頑張って下さいね! 本当に今日までお世話になり、ありがとうございました」 奈緒は席を立って深々と一礼をすると、ドアへ向かって歩き始めた。 そこへ加賀が声をかけた。 「麻生くん! よそへ行っても、何か困った事があればいつでも相談するんだぞ!」 その言葉に、思わず涙が溢れてきた。 奈緒は涙を零さないように一度上を向いて深呼吸をすると、 最後にもう一度深く一礼をしてから、会議室を後にした。 そしてこの日奈緒は、新卒以来ずっと勤め続けた会社を退職した。
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