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そこで美樹が言った。 「手伝わなくてもいい?」 「大丈夫だ! 君も疲れているんだから、ゆっくりしていなさい」 賢一はそう言うと、 美樹の前にコンソメスープを置く。 そして四人が早速スープを一口食す。 思わず奈緒が呟いた。 「凄く美味しい...レストランに来たみたい...」 「本当に美味いな!」 省吾も頷いている。 「うちのお父さんの腕前はプロ級だろう? そのうちきっとレストランを開くって言い始めるよ!」 冬真がそう言ったので、大人達が笑う。 「おいおい、確かにレストランもやってみたいが、そうなると本業の方がおろそかになっちゃうからなぁ...だから多分無理だな」 賢一がおどけた顔で言ったので、また四人が声を出して笑う。 会食はそんな和やかな雰囲気の中でスタートした。 その夜のメニューは、 ●ホタテのカルパッチョ ●生野菜のサラダ ●チキンのポワレ ハニーマスタードソース ●フランスパン だった。 どれも美味しく、プロ顔負けの本格的な味だった。 奈緒は、本当にレストランにでも来たような気がしていた。 「義兄さん、相変わらずプロ級だね! お金を払いたくなる味だよ!」 「あら! だったら払ってくれてもいいのよ!」 姉の美樹が茶化す。 「おいおい、身内からむしり取ってどうする?」 賢一の一言で、省吾と奈緒と冬真が同時に声を出して笑った。 この頃には奈緒の緊張もすっかり解け、楽しい夕食での語らいを 心から楽しんでいた。
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