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食事をしながら、賢一と美樹から二人に質問が飛んで来る。 真っ先に聞かれたのは、二人の出会いについてだ。 二人がどこで知り合ったかについて、 賢一と美樹は興味津々のようだった。 そこで奈緒は正直に、あの日海で出逢った事を伝える。 「あの大雪の日ね! あの日は鎌倉辺りも相当積もったもの! でもそんな雪の日に奈緒ちゃんはなんで海にいたの?」 奈緒はドキッとしてから、なんと答えようか悩んでいると、 「奈緒はね、そこで指輪を落としたらしいんだよ。なっ? たしか自分で買ったやつだったっけ?」 「えっ? え、ええ.....そうなんです......」 省吾が助け舟を出してくれたので、そのまま省吾の話に合わせる事にする。 すると美樹が言った。 「あらぁ~、じゃあ結構大事なものじゃない? 値段だって安くはないだろうし...」 「あっ、いえ、安物でしたので...」 「そうお? それで見つかったの?」 「いえ、見つかりませんでした」 「あらぁ、それは残念だったわねぇ...まあ雪が積もっていたら見つけにくいわよねぇ...」 美樹が残念そうに言う。 すると今度は賢一がこんな事を言った。 「指輪ってね、不思議な事にその人にもう用がなくなると、突然失ったりなくしても返ってこなかったりするらしいよ。それまではその人を守るようにずっと傍にいて、必要なくなると突然消えちゃうらしいんだ。うちの店では、結構そういうエピソードをお客様から聞く事が多くてね...つまりその指輪が奈緒ちゃんの元に戻らなかったって言う事は、もう奈緒ちゃんへの役目を終えたのかもしれないね...」 それを聞いた奈緒は、ぼんやりと思う。 その話が本当なら、徹から貰った指輪は、 役目を終えてどこかへ旅立って行ったのかもしれない。 おそらく、もう奈緒の元には二度と戻らないだろう。 賢一の話に続いて美樹も言った。 「そういう話、私も結構聞くわ! 本当になぜか急になくなるんですって。で、すっかり忘れた頃に、思いもかけない場所からひょっこり出て来たりするらしいわよ!」 その時、二人の話を聞いていた省吾が言った。
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