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もし今徹が生きていたら、自分はどう対応しただろうか?
その答えははっきりしていた。
奈緒は徹と別れていたと思う。徹がどんなに謝ったとしてもだ。
奈緒の父親は、奈緒がまだ幼い頃に母以外の人を愛し、
家を出て行った。
だから奈緒は、浮気に対してかなりの嫌悪感を持っている。
たった一度の裏切りでも許す事は出来ない。
一度浮気をした人は、必ずまた同じ過ちを繰り返す。
そう思っていた。
あの日徹は、奈緒に内緒で、
三輪みどりと温泉へ一泊しようとしていたのだ。
たとえそれが、三輪みどりから突き付けられた
別れる為の条件だったとしても、
そしてそれが二人きりで会う最後の日であったとしても、
決して許せるものではなかった。
その時奈緒は、身体中から怒りが湧き上がってくるのを感じていた。
今なら自分の素直な気持ちを受けとめる事が出来る。
そう......奈緒はずっと怒っていたのだ!
徹に対して怒りの気持ちでいっぱいだっだ。
もちろん三輪みどりに対しても同じだ。
奈緒は徹の死以来、
二人に対する怒りを、ずっと胸の内にしまい込んできた。
そうしないと、自分が壊れてしまいそうだったから。
見たくもない現実から目を背ける事により、
自分の身を守って来たのだ。
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