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省吾は気づいていた。
なんとなく先程から奈緒の様子がおかしい事を。
おかしいと言っても、良い意味での方だ。
奈緒は何かに吹っ切れたような顔をしていた。
そして、元々奈緒が持ち合わせている強さのようなものが、
表に出始めているようにも見える。
いずれにせよ、良い兆候だ。
省吾は、これから奈緒本来の姿が見られるのだと思うと、
楽しみで仕方がなかった。
しばらく心地よい沈黙が続いた後、
省吾は夜のドライブに合うリズミカルなジャズを流し始めた。
「今週の後半は、地獄の日程だな!」
「ですね。明日は朝から北海道出張ですよね? で、帰りは土曜日?」
「そうだね。あー、また今週も休みが一日しかねぇっ! しばらく温泉でも行ってのんびりしたいなぁ...」
「フフッ、無理ですよ。当分連休はありませんっ!」
「鬼秘書めっ!」
省吾はそう言って奈緒の頭をコツンと小突く。
「申し訳ございませんっ! 諦めて下さい!」
奈緒は笑いながら大袈裟に頭を下げる。
そんな奈緒を見て、省吾は笑った。
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