11

26/27
前へ
/342ページ
次へ
省吾は気づいていた。 なんとなく先程から奈緒の様子がおかしい事を。 おかしいと言っても、良い意味での方だ。 奈緒は何かに吹っ切れたような顔をしていた。 そして、元々奈緒が持ち合わせている強さのようなものが、 表に出始めているようにも見える。 いずれにせよ、良い兆候だ。 省吾は、これから奈緒本来の姿が見られるのだと思うと、 楽しみで仕方がなかった。 しばらく心地よい沈黙が続いた後、 省吾は夜のドライブに合うリズミカルなジャズを流し始めた。 「今週の後半は、地獄の日程だな!」 「ですね。明日は朝から北海道出張ですよね? で、帰りは土曜日?」 「そうだね。あー、また今週も休みが一日しかねぇっ! しばらく温泉でも行ってのんびりしたいなぁ...」 「フフッ、無理ですよ。当分連休はありませんっ!」 「鬼秘書めっ!」 省吾はそう言って奈緒の頭をコツンと小突く。 「申し訳ございませんっ! 諦めて下さい!」 奈緒は笑いながら大袈裟に頭を下げる。 そんな奈緒を見て、省吾は笑った。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9531人が本棚に入れています
本棚に追加