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奈緒の部屋へ頻繁に泊まりに来ていた徹の私物は、
かなりの量残っている。
電動シェーバー
シェービングローション
古いノートパソコン
ダンベル
スウェットの上下に下着類
DVDや本、雑誌なども結構な数があった。
それらの物を、段ボールへ詰めていく。
これは徹の実家へ送る予定だ。
少し前までは、徹の私物を見るのも辛かった。
見ているだけで涙が溢れてくる。
しかし、最近はだいぶ落ち着いていた。
涙というものは、
一度枯れるまで出てしまうと出なくなるのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えながら、
奈緒は玄関の棚へガムテープを取りに行く。
その時、奈緒のスマホが鳴った。
電話は奈緒の母・聡美からだった。
「もしもし、お母さん?」
「おはよう! 会社は昨日で終わりだったのよね? お疲れ様!」
「うん...ありがと」
「今日はどうしているの?」
「うん...掃除とか洗濯とか...久しぶりに念入りにやってた」
奈緒は、徹の私物の片付けをしている事を、聡美には言わなかった。
余計な事を言って、母を心配させたくない。
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