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それを聞いた奈緒は、 「寺田さんにまた会う事があったら、お礼を言わないとですね!」 そう言ってクスッと笑う。 話が一段落したので、 そろそろ三上も部屋から出て行くだろうと思ったが、 全く出て行く気配がない。 奈緒はチラリと壁にかかった時計を見る。 デパートの閉店時刻が気になって仕方がない。 そこで奈緒はそろそろ会話を終わらせようと、三上に言った。 「あの...他にご用がないようでしたら、私そろそろ失礼します」 奈緒はそう言い、バッグを手にして歩こうとした。 そこへ、また三上が声をかける 「深山さんは今日北海道へ出張ですよね? だったら、一緒に食事でもいかがですか?」 奈緒はその言葉を聞いて驚いた。 『仮』とは言え、CEOの恋人である奈緒を、 三上は堂々と食事に誘ってきた。 奈緒の常識の中では考えられない行為だ。 そこで奈緒はきっぱりと言った。 「ごめんなさい。今日は用事がありますので...」 「今日が駄目なら、いつだったら都合がいいですか?」 「............」 奈緒は絶句した。 三上は一体何を考えているのだろう? そこで奈緒は思った。 こういう場合は、誤解を招かない為にもきちんと断らなくてはならない。 中途半端にすると、後で事態をややこしくしてしまう可能性があるからだ。 奈緒は、社内でのいざこざや揉め事は、もう懲り懲りだった。 だから奈緒は意を決して三上に言った。
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