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「申し訳ないのですが、私はあなたとはお食事には行けません。ごめんなさい」 奈緒はそう言ってぺこりとお辞儀をした。 そんな奈緒を見て、三上はニヤリと笑うと再び言った。 「深山さんがそんなにいいんですか?」 「えっ?」 「あの人が、そんなに好きなんですか?」 奈緒はその質問に驚いた。 なんでそんな事を、今日初めて言葉を交わした人に 言わなくてはいけないのだろうか? そして、早く帰りたいのに、 なぜこんなところで足止めされなくてはならないのだろう? 奈緒は怒りを抑えて三上に言った。 「あなたに答える義務はありません」 奈緒がきっぱりそう告げても、三上はひるむ様子もない。 「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか! そんなに怒るって事は、もしかして僕と食事に行くと心が揺らいじゃうからかな?」 三上は自信満々に言って微笑む。 『はぁっ?』 普段穏やかな奈緒も、この時ばかりはカチンときた。 この三上という男はナルシストなのだろうか? 確かに三上は社内ではアイドル的存在だ。 さおりや恵子の話では、特に若い女子社員達から凄い人気だと聞いている。 しかし奈緒から見たら、なんの魅力も感じない。 元々奈緒は、線が細い色白系の男性はタイプではなかった。 どちらかというと、省吾のように日に焼けたワイルド系の方が好みだ。 『あれっ? 私、今なんて......?』 奈緒は今自分が考えた事に、動揺する。 それと同時に、奈緒の脳裏に省吾の顔が過った。
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