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あの日、銀色の雪が舞い落ちる浜辺で、
そっと傘を差し掛けてくれた省吾の顔を、
奈緒は鮮明に思い出していた。
『一体私は私どうしてしまったの?』
奈緒はその時、自分の気持ちに気づいてしまった。
自分が省吾に好意を抱いている事に。
けれど、慌ててその気持ちをかき消そうとする。
いくら婚約者の徹が浮気をしていたとしても、
亡くなってまだ半年も経っていない。
それなのに、もう違う男性に好意を抱き始めている自分が、
何か間違っているような気がした。
動揺している奈緒を見て、三上は勝ち誇ったように言った。
「図星でしたか?」
その的外れな一言で、急にハッと我に返った奈緒は、
三上の言葉を否定するように言った。
「見当外れな事を言うのはいい加減にして下さい! とにかく私はあなたとはどこへも出かけません! その理由は、私はあなたに全く興味がないからです!」
普段はおとなしそうな奈緒が声を荒げたので、
三上はかなり驚いたようだった。
その時奈緒のスマホが鳴った。
バッグからスマホを取り出すと省吾の名前が表示されていたので、
奈緒は慌てて電話に出る。
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